デッドニングせず、再考察して効果的に良い音にする方法

最近「クルマのオーディオをより良い音にしたい」という際のご相談で、

  • デッドニングをしないと音が良くならないと聞いた」とか
  • スピーカーケーブルを引き直さないとダメと聞いた」とか
  • 外部アンプを付けないと話にならないと聞いた」などなど

少々耳を疑う内容をお客様が発します。

良い音にしたい全員・全車が行わなければならないかというと、そんなことはありません。

必須ではなく、実施した方が良くなる可能性が高くなるだけです。
良くなる点があっても悪くなる点があるとガッカリします。

選択する機種や取り付け作業の問題もあります。
後々のトラブルを考慮すると、変更する箇所は少ないに越したことはありません。

弊社では、音の出口であるスピーカーを適切なものに交換することをお勧めしていることが多いです。

スピーカー交換では、デモカーの音を聴いてもらって、若干擬似的ですが、交換後の効果は体感できます。

費用対効果と長く安心してお使いいただくことを考慮した結果です。

デッドニング、手段が目的になっていませんか?

上記3点の中で、一番グレーな部分、「デッドニング」

量販店のデモで、車のドアやオイルの空き缶を流用して、片方をデッドニング有り、もう片方を無しにして聴き比べできるようにしてあるのを見かけます。

多くの方が違いをお分かりになると思います。

「穴が明いた板(ドア)にスピーカーが付いている状態より、密閉した箱(ドア)にスピーカーが付いている方が良い音がする」という理屈です。

本当に密閉した箱の方が、ベストな良い音がするでしょうか?

ドア鉄板を塞ぐと容量が減って、鳴りにくくなる

スピーカーボックスをドアの鉄板部分だけでなく、内装までと考えると、鉄板部分を密閉すると、スピーカーボックスの容量が減ってしまいませんか?

ドアを密閉している主な理由は、「スピーカー背面から出てきている音が表側に回り込んでしまい、音が干渉して低音が鳴りにくくなってしまうから」です。

サブウーハーの追加やスピーカーの機種を変えずに、より多くの低音を出すためには、背面からの音を表に回り込ませなければ良いのです。

ドア鉄板を密閉すれば低音は回り込みませんが、箱の容積が少なくなりますので、全体的に詰まった印象の音になりやすいです。

理由:

スピーカーの振動板が動くと、ドア内の圧力変化が起こります。

スピーカー振動板が凹むと圧力が上がりますが、密閉すると圧力の出口がないため、スピーカーが自由に動きにくくなります。

強い信号では動けますが、弱い信号では動きにくくなります。

詰まった印象の音は、「スピーカー振動板の動きを抑制した音」なのです。

容積を小さくせず、音の回り込みを抑制する方法

サービスホールを塞ぐという行為は間違いではありませんが、やりすぎる(全部塞ぐ)と低音が出なくなる理由です。

ドア内の容積を小さくせず、大きく保ったままにしたいのです。
スピーカー背面の音を回り込ませないためには、スピーカー表面と背面までの空間距離を大きくすれば良いのです。

穴を残す部分を小さくすれば、より低音は出やすくなりますが、穴が小さくなるに従い、擬似的にポート化(バスレフタイプのサブウーハーにある筒と同じ考え方)していきますので、低音は出ても自然な音から乖離し始めます

ある程度は穴を残す必要があります。

ドアスピーカーで出せる低音には限界があります。
イコライザーなどでムリに出しても、歪んだり割れたりしてしまいます。

低音が足りなければ、サブウーハーに頼るのが一番です。

ドア鉄板に対しての実験開始

弊社デモカーi-MiEVを題材に、音のチューニングを実験してみます。

作業前は、内装のビビり音を低減させるために、「ダイポルギー」という防振材を挟んである状態です。

固定はしていません。
固定してしまうと、サービスホールを塞いだのと同じになってしまうからです。

ドア鉄板と内装の間に挟み込むだけでも、内装のビビりを抑える効果があります。

スピーカー付近のサービスホール低音回り込み抑制
サービスホールを積水化学工業製防振材「レアルシルト」で塞ぎます。

スピーカーから近い穴は塞ぎますが、大きな穴では途中までです。
どこまで塞ぐかは、回り込まないでほしい低音の周波数によります。

全面貼りではありませんので、防水ビニールの中に追加します。

内装を元に戻して試聴すると、音の回り込みを抑制しているおかげか、低音量が増えている感じがするのと、他の音も少し現実感が増えている感じがします。

ドア鉄板の処理は、あくまで「回り込みの抑制」であって、「ボックス化」ではありませんので、施工終了です。

ドア内装への実験および追加施工

スピーカー背面から出ている音は、ドア鉄板内だけでなく内装まで到達していますので、低音の量が増えれば内装もビビりやすくなります。

防振材ダイポルギーを挟んでいると言っても、完全には抑制できていません。
ビビり音が出ている箇所へ効果的に防振材を貼ります。

基本的に音を出してビビっている箇所を手で押さえて、ビビり音が消える箇所が防振ポイントです。

音を出す → ビビり箇所を確認 → 内装を外す → 防振材を貼る → 内装を付ける → 音を出して確認

ひたすら繰り返します。

方法に定番やセオリーが無い

「以前、ここを対処したらokだったから」という経験だけでは対処できません。
実験を繰り返して、効果のある個所だけ残します。

i-MiEVドア内装防振材貼り付け
i-MiEVの場合、大きな面積を貼っている箇所はほとんどなく、小さい面積で多数貼るのが効果的でした。

以前、他の車両で行った時には、大きめの面積で貼るのが効果的だったのですが、i-MiEVだと音が悪くなってしまいましたので、剥がしています。

i-MiEV内装プラスチックに防音材挟み込み
プラスチック同士の隙間に防音材を挟み込むのも有効でした。

セオリーはありません。
アイデアと発想も大事です。
時間と手間が掛かります。

ドアスピーカーを交換して、「まだアンプやサブウーハーは付けたくないけど、もっと音を良くしたい」というご要望は、対処可能です。

ご相談はお気軽にどうぞ。


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